断定の口調でポップは言った。
「それ、手がかりになりますよねっ」
口調に反して、アバンを見上げる目はすがるようだった。
「ダイ君が黒の核晶を抱えて飛んだのは、カール北部のロロイの谷付近からでした。彼が垂直に飛び上がったとしたら、核晶爆発後の落下地点は限られていました。でも、何一つ見つからなかった」
ポップはうなずいた。
「最初は、あいつが爆発のショックでケガとかして自力でこっちへ戻れないんだと思ってた。けどあいつの体力は普通の人間とは違うんだ。五年も動けないはずがないっ」
ポップが精力的に飛び回ってダイを探す間、他の仲間たちはもっと気の重い作業をすすめていた。つまり、落下地点とおぼしき場所を中心に広範囲にわたってダイの痕跡を調べていたのだった。靴やベルトを含めた衣服、装備品、そして、体の一部。だが、マァムたちがほっとしたことに、ダイの体はまったく見つからなかった。
「その次に考えたのは、いつかみたいにダイが記憶喪失になった可能性だった。だから、ダイに関係のある場所を探し回った。デルムリン島へは真っ先に行った。それからあいつと旅した場所を全部回った。特にテランの湖は水に潜って竜水晶の神殿あとを調べつくした。けど、結果はダメだった」
子供のころと変わらない表情でポップは訴えた。
「先生、ダイのやつ、ほんとに何一つ残さずに消えちまったんです」
アバンは作業台の上の輝聖石を取った。
「よくがんばりましたね、ポップ」
アバンの声はしみじみとしていた。
「ダイ君の持ち物が手に入ったからには、これが使えます」
アバンは作業台から銀色の円盤を取り上げ、その中央にダイのしるしを取り付け、ガラスの蓋をかぶせた。
「先生、それは?」
アバンは手の中の円盤を見せた。周辺に十二方位が描きこまれ、中央にしるしがのっている。
「これは私の祖父が造った一種の羅針盤です。見ていてください」
アバンのしるし、つまり輝聖石は、長めの涙滴型をしている。その尖った方の留め金が羅針盤の中央に留めつけられ、丸い方のはしが震え始めた。
「これ、まさか」
思わずマァムはつぶやいた。輝聖石は動く。方位の目盛りの間を迷うようにさまよい、やがて南東やや南寄りを指して止まった。
「そうです。この羅針盤の示す方角にダイ君はいる」
メディックカラーの上着からばさっと音を立ててアバンはケープをはねのけた。
「この方角へ行ってみましょう。みんなでダイ君を迎えに行くんです!」
●
アバン、ヒュンケル、ポップ、マァム。その四人は、いわく言い難い表情で周囲を眺めた。
「ここっ、地底魔城じゃねえか!」
ポップがつぶやいた。
羅針盤はカールから見て南東の方角を指していた。最初にルーラでホルキア大陸にあるパプニカへ飛び、それから気球船で羅針盤の示す方へ進んだ。羅針盤は一行をパプニカ王国のある海岸よりもさらに奥まった場所へ導いた。気球船の前方にそびえたつのはヴィオホルン火山だった。
突発的な噴火によりこのあたりは一度マグマの海に沈んだ。今はマグマが冷えて見渡す限りの火山岩の荒地となっていた。
羅針盤に取り付けた石が動かなくなったとき、一行は気球を降りて地に降り立った。
「あいつ、こんなのの下敷きになってんのかよ」
泣きそうな声でポップが言った。
「下敷きとは限りませんよ」
冷静にアバンが言った。
「調べてみましょう」
「ど、どうやって」
もともとヴィオホルン火山には登山道などなかった。かつては人間をよせつけない結界があるとされ、魔法で近寄ることもできなかった。
アバンは、ちらりとヒュンケルを見た。ヒュンケルがうなずいた。
「地底魔城は長い螺旋階段が表向きの入り口、正面玄関だったが、いわば裏口がある。オレが造らせたものだ。ついてこい」
と、元不死騎団長は言った。
一行にはアバンと弟子たちの他に、フローラとレオナが加わっていた。ダイが見つかるかもしれないというので、側近たちの反対を押し切ってレオナが同行している。アポロとマリンだけが付き従った。フローラも動きやすい服に替えていっしょに来ていたが、護衛兵などは連れていない。
「まあ、アバン先生がいっしょだしね」
とマァムは思った。
それよりもマァムには気になることがあった。ヒュンケルは、少し高くなったところを目指して坂を登っていた。その手には歩行の助けにするための長い棒があった。
「だいじょうぶ?荷物なら、私が持つわ」
ヒュンケルはかすかに口元をほころばせた。
「けが人扱いはしなくていいぞ」
「でも」
「今のオレは体力と機能の回復に努めている。杖があれば、人並みに歩けるようになった」
孤高の天才剣士だった男は穏やかにそう説明した。
「ヒュンケル、そんな顔で笑うなんて」
つい、マァムはつぶやいた。辛くはないか、いらだたしいのではないか。そんな心配は凪のような笑顔の表面を滑って消えた。
不思議そうにヒュンケルが尋ねた。
「ゆうべラーハルトが同じことを言ったぞ。オレの顔がどうかしたか?」
ふふっとマァムは声に出して笑った。
お二人さん、と声がした。ふりむくと、ポップがすぐ近くに立っていた。
「仲良さそうでけっこうなことで。入り口あったぞ。先生が開けてくれたんだ」
見ると、大きな岩がスライドして、その中に階段があるようだった。
「入ってみましょう。ヒュンケル、先導をお願いします。私は最後尾につきますから」
地底魔城を攻略した元勇者は、中を指してあっさりとそう言った。
●
裏口の階段をたどっていくと、大きめの空洞へ行きついた。ダイの輝聖石をセットした羅針盤は一番奥の部屋を指していた。
ヒュンケルが古い扉を開けた。かなり大きな部屋だった。壁際には厳重に封印した木箱や壺などが並んでいる。中央に一段高くなった場所があった。
「なんだ、この部屋?」
きょろきょろ見渡してポップがつぶやいた。
「魔王の城のなかにしちゃ、きれいに片付いてるけどよ。こんなとこにダイがいるのか?」
アバンは羅針盤をにらみながら部屋の中を動いていた。
「ここですね」
部屋の真ん中の基壇の前にアバンは立っていた。基壇は丈夫な布ですべて覆われている。布の表面には見慣れない文様があった。
「これは……!」
そうつぶやくとヒュンケルは基壇を隠す布の端をつかみ、一気に取り去った。青緑の薄い光がその場に立ち上がった。
「これは旅の扉です、先生」
目の前に魔法陣があった。その内部で薄く輝く液体がひとりでに渦を巻き、回転している。かすかなうなりといい、たちのぼる魔法の香りといい、稼働中の旅の扉のようだった。
「なぜこんなところに?これはどこにつながっているのですか?」
「……モルグに聞いた話ですが」
記憶を探るようすでヒュンケルが話しだした。モルグというのは地底魔城の執事のような役割のアンデッドだった、とマァムは思い出した。
「これは魔王ハドラーの持ち物だったそうです。この旅の扉は魔界に通じていると聞きました。当時のオレは興味がなく、モルグに命じて撤去させました。モルグはこの倉庫へしまいこんだのでしょう」
アバンは一行に羅針盤を見せた。輝聖石は明らかに旅の扉を指していた。
「ようしっ、あいつのいるとこまであと一歩だ!」
腕まくりする勢いでポップが飛び込もうとした。
突然室内に真っ赤な光があふれた。
「立ち入るな!」
重々しい声が旅の扉から響いた。同時に地底魔城倉庫の実体が薄れていった。
「みんな、固まって!」
とアバンが指示した。
「これは亜空間です。こんな旅の扉は初めて見る」
アバン夫妻と使徒たちはあたりを見回した。頭上には星空が広がっているが、見覚えのある星座はない。足元は石でも鉱物でも陶器でもない不思議な素材のタイルをどこまでも敷き詰めた床だった。
その床と星空の間に何かいた。
一見、巨大な扉に見えた。開けばあの鬼岩城が歩いて通れるほどの高さと幅がある。見たところ木材をはめこみ、鉄鋲をうって補強したようだが、ここまで巨大な木材など存在しない。さきほど旅の扉から放たれた赤い光は、この巨大扉そのものを紅にゆらめかせていた。
扉の枠はアーチ状になっている。枠の上部アーチ、ふつう彫刻などの飾りのある場所に、機械人形の顔がついていた。
巨大な扉の上の顔は、また巨大だった。無表情にこちらを見下ろしている。
「あなたは誰です?」
扉を見上げてアバンが尋ねた。人形の眼球が動いた。一行を認識したようだった。
「我はゲートキーパー、地上と魔界を分かつ門を守る者」
と機械人形が答えた。
「古の神々が我をここに配置した。地上生まれの者は魔界へ入ってはならない。魔界生まれの者は地上へ入ってはならない」
マァムは手のひらで腕の鳥肌を撫でた。落ち着くのよ、マァム!そう自分に言い聞かせたが、震えが止まらない。まるで大魔王バーンが眼前にいるような緊張感に縛られている。アバンはじめ仲間たちもじっと警戒していた。
「ゲートキーパー、あなたはどうやら本物のようだ」
とアバンが言った。
「あなたが神に造られた者だというなら、教えていただきたい。数年前までこの地上には魔族など魔界の住人たちが堂々と跳梁跋扈していた。なぜそのようなことが可能だったのですか?」
ゲートキーパーの声はきしむような音を立てた。
「我の守る門以外の出入り口を設け、そこを出入りした者たちは確かにいた。だが、五年前のある日、その出入り口は突然に閉ざされた」
マァムたちは視線を交わした。その出入り口とはおそらく大魔王バーンが開いたもの、そしてその死とともに閉ざされたものに違いなかった。
「したがって今は神の定められた掟のとおりである。地上生まれの者は魔界へ入ってはならない。魔界生まれの者は地上へ入ってはならない」
「いいや、違うね!」
ポップだった。真っ赤な光に驚いて腰を抜かしていたのだが、さっさと立ち直ったらしい。ポップは扉の上のゲートキーパーを見上げた。
「少なくとも一人、地上生まれの者が魔界にいるぜ。名は、ダイ。れっきとした地上生まれだが、どうしたわけかそっちへ落っこちたらしい。そんなやつがいちゃあ、掟破りになるンだろ?けど安心しな。おれたちがダイを引き取るからよ。さあ、どいた、どいた!おれたちを通してくれ」
マァムの背後でヒュンケルがくすりと笑いを漏らすのをマァムは聞いた。久々に聞くポップ節は絶好調だった。
「立ち入るな!」
さきほどの警告をゲートキーパーは繰り返したが、どこかあわてているような口調だとマァムは思った。
「よっしゃ、それじゃ、あんたがダイを探し出してここへ返してくれよ。そうすりゃこっちだってわざわざ魔界へもぐらなくて済むんだからさ」
「本当にそのような者がいるのか?」
「おう。ちょうど五年前だな」
「我は把握していない」
こほんとアバンが咳払いをした。
「五年前まで、あなたが把握していない出入りがあったはずですね?」
「ほら見ろ。あんたが責任者なんだろ?さっさとダイを返してくれ」
ぐぅの音も出ないらしい。どうした、どうしたと煽るポップに、ついにゲートキーパーが折れた。
「立ち入りを、認める」
やったぜ!とポップが躍り上がった。
「ただし、地上から魔界へ受け入れるのは四名とする。そのダイという者がすでに魔界にいるなら、捜索隊は三名である」
「けちけちするなよ」
「魔界とは、地上生まれにとって過酷な環境なのだ。三名が滞在できるのは七日を限度とする」
「それじゃ見つかるもんも見つからねえよっ」
「嫌ならば入るな」
「って、おい、嫌だなんて言ってねえだろ?行くよ、行くってば」
アバンが声をかけた。
「では、七日で戻る者の代わりに別の者を送りこみましょう。捜索隊の三名は固定ではなく、入れ替え可能としていただきたい」
んなこと、できんの?と視線でポップは尋ね、マァムとヒュンケルは肩をすくめた。
「……了承する。ただし、捜索隊の活動は月の運行のひとめぐりをもって区切りとする」
「ひとめぐり、おおむね二十八日ですね。その間、捜索隊のメンバーは出入り自由としてください。また、そのメンバーの出自が地上か魔界かは不問に付す、と」
ぎぎぎ、とゲートキーパーはうめいた。
「二十八日の期限、その日数の中で一度に活動するのは七日につき三名。これを守るなら、その条件を呑もう」
「けっこう。ポップもそれでいいですか?」
ポップはうなずいた。
「ひと月弱あれば、少なくとも手がかりくらいはつかめるな。よし、さっそく」
「待ちなさい!」
厳しい声でアバンが止めた。
「なんでだよ、先生っ!」
「行先は魔界です。なんの用意もないのに突入などもってのほか」
う、とポップがひるんだ。あたりを見回してレオナに目を付けた。
「姫さん、何とか言ってくれよ。ダイが待ってっかもしれないんだぜ?」
レオナは一度何か言いかけて、うつむき、首を振った。
「ポップ君、先生の言う通りよ」
がくんとポップは肩を落とした。
アバンはゲートキーパーに向き直った。
「私たちは一度引きます。捜索隊のメンバーを決め、準備を整えて再度挑みます。私たちの取り決めを忘れないでください」
ゲートキーパーのつかさどる亜空間がゆっくり薄れていく。扉から放たれる光は、赤から青みがかった緑へもどっていった。
「そちらこそ、掟を遵守せよ。地上生まれの者は魔界へ入ってはならない。魔界生まれの者は地上へ入ってはならない。ダイという者はとにかく、もともと魔界にいるものを地上へ連れ出すことなどなきように」
その言葉を最後に亜空間は消え、一行は再び地底魔城の倉庫に立っていた。
「ここは一度撤退しましょう。魔界へ挑むのは、すべての準備を整えたあとです」
アバンについておとなしく引き返しながら、マァムは考えていた。
――どうしたのかしら。レオナらしくないわ。
●
カールの国王夫妻は地底魔城から帰国してまもなく公務に戻った。その前に女王フローラは城の召使たちに命じた。
「パプニカのレオナ様とお供のみなさん、それからアバンの使徒一同、今夜はカールの城にお泊りです。丁寧におもてなししてください」
以前にもマァムたちはこの城に宿泊したことがあり、今回も良い部屋がそれぞれに提供された。ホルキア大陸往復という忙しい一日が終わろうとするころアバンの研究室を訪れた者がいた。
「先生、すいません、ちょっと話をしていいですか」
ドアのすきまから、魔法使いの若者がおずおずとのぞきこんでいた。
室内の大きな椅子に座ったアバンは、片手でかるく眼鏡を直した。
「一番手はあなたですか、ポップ」
さあ、おはいり、とアバンは弟子を迎えた。
背が伸びた、とあらためて思った。冒険に憧れていた小柄な少年は稀有な才能を持った魔法使いに、もとい、大魔導士に成長していた。
大魔王を下した勇者ダイの相棒、大魔導士マトリフ唯一の内弟子。かつてマトリフを追い出したパプニカ、ポップの父ジャンクの出身地ベンガーナ、そしてノヴァの父バウスン将軍の国リンガイアの三国から、アバンは内々に問い合わせを受けている、「ポップを宮廷魔法使いとして召し抱えることはできないか?」と。
「最近、ランカークスへは?」
アバンと向かい合ったいすに腰掛け、ポップは指先でほほをかるくかいた。
「このあいだ、ちょっと。ノヴァが美味いリンゴをくれたよ。リンガイアから送ってくるんだって」
このようすでは、宮廷に仕えるなどということはまったく目に入っていないらしかった。
「昼間はおれ、すいませんでした」
とまじめな顔でポップが言った。
「あの旅の扉は魔界へつながってるんですよね。魔界って、よっぽどやばいとこですか」
ふむ、とアバンはつぶやき、椅子の背もたれに身を預けた。
「魔界についてはわかっていることの方が少ないのです。なにせ、そこへ行って戻ってきた人間がいないのですからね。けれど昔から魔界は魔族とモンスターの故郷と言われてきました。人間の世界であるこの地上とはまったく異なる環境のはずです」
「だからゲートキーパーってやつは、地上と魔界を分けておきたいのか」
そう言ってから、へへっと笑った。
「おれ、バーンがやったことは今でも賛成できねえが、ゲートキーパーに頭っから『おまえは通さない、帰れ』って言われてみると、バーンがこなくそって思ったのも少しわかる気がする」
「それでバーンは、自分の魔力で出入り口をこじ開けたのでしょう。大魔王はだいぶ神々を恨んでいるようでしたねぇ」
いすの上で、ポップは背を丸めていた。
「魔界の環境は過酷だ、ってゲートキーパーが念を押してたし。ダイのやつ、そんなとこにいるんだ……。一刻も早くあいつの好きな地上へ連れ戻してやりたい。先生、おれ、考えたんですけど、そのう」
くす、とアバンは笑った。
「おやおや。ずばり言ってごらんなさい」
「ずばりって」
「考えてきたのでしょう?魔界へ行く前になすべきことが何なのか。結論が出たので私をたずねてきたのでしょうに」
はぁ、とポップは息を吐いた。
「先生にはかなわねえな、やっぱり」
にやりと笑った後、真顔になった。
「あらためてお願いします、先生。おれに破邪の秘法を授けてください」
「ほう?」
破邪の秘法とは、呪文の効果を極大化する魔法技術だった。
「魔界でどんなことが起きるかわからないけど、おれは対処できるようになっていたいんです。先生がバーンパレスで使った破邪の秘法は、凄い威力だった。あれがいつでもできるようになったらって、思って」
「それはけっこう。でも、あなたはもう、とっくにその技術をものにしているのかもしれませんよ?」
きょとんとしているポップに、アバンはにこやかな笑顔を見せた。
「おれが?」
「ロモスの王宮でブラスさんにマホカトールを使ったと聞きました。破邪呪文マホカトールを使えたということは、破邪の秘法の適性がありそうなのです」
いや、あれは、とポップはしどろもどろになった。
「なんか奇跡的にできちゃったっていうか、あれもたぶんゴメが奇跡をおこしてくれたのかも」
ふふふ、とアバンは笑った。
「破邪の秘法を習得する、いいですねえ、ポップ。自分の長所を伸ばす、たいへんに論理的だ。マァムにいいところも見せたいし」
「そうそう、マァムにって、先生!」
昔からノリのいい弟子にアバンは笑いかけた。
「ただし、これには条件があります」
ポップは微妙な顔になった。
「スペシャルハードコースは覚悟してるぜ」
「エクストラスペシャルですよ?」
くすくす笑ったあとに、アバンはすらっと言った。
「ポップ、破邪の秘法とは別に習得してほしいスキルがあるのです。魔界で役に立つかもしれません」
「なんですか?おれ、なんでもやります」
「長所を伸ばすのと同時に、弱点の克服も図ろうという話です。魔法使いは常に杖を携帯していますね?」
「杖ですか?まあ、たしかに」
「しかもポップ、あなたが好んで装備する杖は、スティックやワンドというよりロッドかステッキに近い。ということは」
提案を聞いたポップの顔が、は?と言ったまま固まった。